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Bブロック
第1回戦 第4試合




韓国代表 フランス代表
ご主人様
サイ・スウォン
メイド
リ・ヨンエ
メイド
シャルロット
ご主人様
ネイ
VS



選手控え室


 こちらはフランス代表控室。

「ねぇ、旦那様~。ご飯にします?お風呂にします?それとも~、わ・ら・わ~♪ーーーーーッッッッッ♪イヤ、旦那様こんなところで、ダメぞよ、あっ……」

 妄想中のシャルロット。

「……………姫様」

 ネイの呼ぶ声がする。

「よいではないか、よいではないか~♪」

 気付かないシャルロット。

「…………姫様」
「あんなことやこんなことを………」
「………姫様」
「イヤン♪わらわのおっぱいが…」
「……姫様」
「感じるぞよ~♪」
「…姫様」
「ムフフ~♪」
「ウホン、姫様」


 ハッ、と気付いたお姫様。

「いや…あ…ネイ、違うのじゃ。わらわはネイと二人きりで…あんなことや…こんなことを…イヤン♪なんて考えてないぞよ」

 顔を赤らめるシャルロット12歳。
 妄想の中身はともかく、顔を赤くするところ自体、年相応の愛らしさがある。

「……でなんじゃ?ネイよ」
「姫様。もうすぐ我々の戦いですぞ。さあ、ご出陣の準備を」
「おー、もうそのような時間であるか」

 余裕である。
 そういえばこの控室、シャルロットの意向(わがまま)により豪華に彩られている。シャンデリアで部屋を飾り、ビュッフェを用意し、日本にいる大使を招いて、まさにパーティーである。

「さあ、皆はこちらで楽にするがよいぞ。なに、すぐに終わらせるぞよ。」
「姫様、くれぐれもご無理はなさいませぬよう」
「分かっておる。それより……」

 シャルロットはネイに囁く。

「せっかく二人きりになれたのだから、あの…その、こ…今夜は……」
「えぇっ!そ、そのような…!」
「声が大きいぞよ、ネイ。安心しろ、お父様の許しを頂いておる」

 と、ネイに書状を渡す。

『ネイよ。シャルロットちゃんのわがままを許せ。しかし、もし可愛い娘とあんなことやこんなことになったら、お前を生かしてはおかん!』

 難しい注文だ。

(またか…)

「……はぁ~」

 ため息をつくネイ。

(だから姫様の御守りは骨が折れる……)

「では、行くぞよ。旦那様♪」
「ですから姫様、その呼び方は……」
「よいではないか、よいではないか~♪」

 こうして二人は入場するのであった。







 こちらは韓国代表控室。

「いいか、よく聞け……」

 スウォンはヨンエにそう言うと、蛇狩の弱点について話し始めた。
 ヨンエが今まで戦ってきた相手は、彼女自身よりも大きくウェイトや力もある者だったが今回の相手は、上背も無く軽い体重の持ち主のため蛇狩を掛けることが難しい、というのだ。

「つまり、蛇狩は掛ける側の力よりも相手の身長や体重にその威力を左右されるという事だ……」

 だから、シャルロットに蛇狩を掛ける事に気をとられていれば、ヨンエは必ず負ける、と、スウォンは言い切った。
 ましてや、シャルロットは2メートルの斧を振り回すパワーの持ち主だ。こちらの間合いにすら入れさせてもらえないだろう、と続ける。

「……が、つけ入る隙が無いわけではない。」
「えっ、それって?教えて、教えて。」


 すかさず、ヨンエが飛びつく。

「ダメだ!」
「何で!」


 スウォンに顔を近づけるヨンエ。

「……、顔、近すぎ。」

 今度は彼の両耳を引っ張る。

「自分で考えろ!」
「んもーーー、ケチ!」


 ヨンエもっと引っ張る!

「ダメなものはダメだ!っていうか、早く手を離せ」

 彼女の手を無理矢理離すスウォン。

「…だから、長所の中に短所あり、短所の中に長所あり、といったとこかな」

 
と、彼は歩き出す。

「……?」

 ポカ~ンとするヨンエ。

「嫌だ~!わかんないよ~!」
「ほら、出番だ。行くぞ」

 二人はそんな感じで入場した






試合会場


『さあ、こちらは広島市民球場Bブロック試合会場です!まもなく第4試合がはじまるところです。わたくし、今大会のメイン実況の実況子のサポートをします、「幸せを呼ぶカバ」スープーです!おおっと、今、ゴングが鳴った!』

 リング上まずはシャルロット、ヨンエの両者が戦うようで、二人のご主人はリングのコーナーポストに対角線上にそれぞれのメイドを見守っている。ネイは心配そうに、スウォンは無言で腕を組んで。

「喰らうのじゃ!」

 シャルロットはユグドラシルと呼ばれる2メートルの大斧を軽々と振り回す。まずは隙の無いハーフスイングで攻める。

 一方のヨンエは武器を持たない。
 当然、シャルロットの攻撃に後手を取る事になる。シャルロットの斧を回避はするが、攻撃に転じることができない。

「…フッ、あの女が敗れるのも時間の問題か」

 ネイはそう呟く。
 ヨンエが敗れれば、あとは向こうのご主人と2対1で有利になる。

 リング上ではなおもシャルロットの攻勢が続く。

「そなた、早くわらわに降伏したらどうじゃ!」

 攻撃をトップブレイクに変え、着実にヨンエを追い詰めていく。
 しかし、ヨンエはスピードで斧から繰り出される突きをかわしていく。

(………まだみたいね)

 ヨンエはスウォンを見た。
 スウォンは沈黙を守っている。彼はヨンエに

「オレが合図出すまで攻撃するな。相手の斧をできるだけギリギリでかわせ」

 と指示していたのだ。

『あぁっと!ここで、シャルロット選手、トップブレイクからもっと威力のある熊手斬りに!』

 シャルロットの得意技がヨンエを襲う。

「………ッ!」

 ヨンエは左腕にダメージを負った。
 さらにシャルロットは勢いづく。
 ヨンエは振り返る。
 スウォンは首を横に振る。

(…まだだ!)

 スウォンはそう言いたげだ。
 このまま、押されるかもしれない、だが、可能性の芽は摘まない。
 チャンスはもうすぐだと彼は信じるだけだった。



 一方のフランス側。

「姫様!優勢ですぞ!ここは確実に追い詰めましょうぞ!」

 ネイの声援が聞こえた。
 もうどのくらいの時間が経っただろうか、シャルロットは時間が気になりはじめた。

(わらわの力で勝たねば……)

 ネイに気付いてもらいたい部分――自分が独力で勝利することで、一人の大人として彼に見てもらいたい、少女の純粋な想い――が、少しずつ焦りに変わりはじめた。

(振りが荒くなったようね……)

 ヨンエはシャルロットの斧に精密さが欠けてきたのを感じた。
 巨大な斧を持つ少女の息の荒さも聞こえてきた。
 ネイもそれに気づく。

「姫様!大技はお止めください!」

 彼の助言は焦っているシャルロットのプライドを逆なでした。

(何故じゃ、勝利はもうすぐぞ!ネイは分かっておらぬ。)

 と、シャルロットは、ユグドラシルを天高く放り上げた。

『聖斧ユグドラシルよわらわに力をー!ギガントアクセル!』

 彼女は斧を追うように地を蹴り上げた。

(……ここだ!)

 スウォンは勝機を見た。

「よーし!ヨンエ!行けーッッッッッ!」

 彼は拳を突き出す。
 合図あり!ヨンエはスピード全開でシャルロットに向かって跳んだ。

「しまった!」

 と、感じたのはネイ。

(グッ…、あの守勢は偽りだったか……)

 ネイの後悔は先には立たない。
 ヨンエはシャルロットの胴を両脚で掴む。

「……ハッ!」

 シャルロットが気付いた時には彼女の蛇狩の牙に捕まっていた。
 脚が離れない。

「これで終わりです!」

 ヨンエは蛇狩を空中から放つ。
 シャルロットは地面に落とされる形になった。
 彼女自身は軽いが、空中から落とされればダメージは少女の体重の数倍はあるのは必然。

(――あの斧は威力がある。しかし、それを扱う者の力には限界がある。ましてや少女が持つには相当のパワーと持久力が要る。そこが切れるのを待てばよい。そして、武器を持つ者のデメリット、先の先を制されれば攻撃不可能だ。斧となれば先の先を取られやすい。破壊力と引き換えに背負う弱点はそこだ。)

 スウォンの狙いは当たった。
 主人を失い、斧はリング場外に刺さる。

 そして、シャルロットはまさにリングに叩きつけられようとしていた。





『で、出ました!リ・ヨンエの必殺技蛇狩!このままだと、シャルロット選手は地面に衝突だー!このピンチに……さあ、どうする!……あぁっと!ネイ選手が出るー!』

 当然ネイがシャルロットを放っておける筈はない。
 彼女を守るべく、落下地点に走る。
 もし、ヨンエが落下までシャルロットをホールドしていればネイの行為は無意味だが、空中から投げ飛ばす変則的な蛇狩だったために技の威力はあるが、極り具合は完全ではない。

「グワッッッッッッ!」

 痛みを堪え、両腕でキャッチし、シャルロットをかばう形で回転した。
 彼女が地面に直撃するのを防いだが、頭部以外を漆黒の鎧で覆われているネイに対し、防具の無いシャルロットのダメージは小さくない。

「姫様!御無事ですか!」

 必死のネイに、傷ついた少女は返事をかえす。

「……ネイよ、そなたの助言を聞いておれば…」
「いいえ、もうよろしいのです。姫様、あとはこのネイにお任せくださいますよう」


 そう言い、シャルロットをリングのコーナーに座らせた。

「……負けはしません!全てはフィリス家のため、姫様のために!」

 ネイはヨンエに向かって突進した。
 彼は左手から剣を抜き、彼女に斬りかかる。

(……速い!)

 ヨンエは避けるのがやっとのようだ。剣速がシャルロットのそれより格段に違った。
 ネイの突きを回避しても、回避した方向に剣が向かってくるような、まるで剣に追尾されている感覚だ。苦し紛れに中途半端な攻撃を仕掛けようものなら、その隙を突いて斬られるだろう。

 ここでネイは不意にヨンエの左腕を狙った。

『あぁっと!ヨンエ選手、シャルロット選手で負傷した左腕!左腕を斬られたぞ!腕は流血している模様!』

(狙いは最初から左腕だったのね。)


 同じパターンの攻撃を見せておいて、相手をそれに慣れさせて、的確に負傷したところを狙う、ネイの得意とする戦法である。
 ヨンエの左腕からは赤い血が白のチョゴリを染めた。

「フッ、たかがこの程度か……」

 ネイは鼻で笑う。その時、

「ヨンエ!」

 スウォンがヨンエに駆けよろうとした。

「……好機」

 ネイは狡猾にも、ヨンエに走り寄る彼に素早く近付き、

「お前は邪魔だ……」

 と、自らの口に仕込んだ毒針をスウォンの首辺りに刺した。

『……ん!ネイ選手何をしたー!ヨンエ選手に駆けよろうとしたスウォン選手が急に倒れた!これは韓国ピンチです』

「スウォン!」


 倒れたスウォンをヨンエは抱きかかえる。

「無駄だ!そいつに毒針を刺した。あと3分もすれば、あの世行きよ!」

 ネイは高らかに笑う。
 観客のなかにはネイに罵声をあげる者もいる。
 しかし、彼にとってフィリス家が大切であり、それを邪魔する者には、非情なまでの殺戮もいとわない。シャルロットや身の回りの人達に接する時の温厚さを戦いの場に持ち出さない。故に観客のブーイングも大して気にならない。

「さあ!終りだ女!」

 漆黒の鎧がヨンエに近付く。剣を両手で持ち一刀両断の構えをとった。

 スウォンは倒れうずくまったままだ。ヨンエを斬ってスウォンの薔薇を取ろうが、その逆であろうが、邪魔するものはいない。全てはネイの思うがままだ。

「姫様!御覧下され!我々の勝利ですぞ!」
「よくやったぞネイ!早く終わらせるのじゃ!」


 座っているシャルロットはホッとする。
 彼女は戦える体力はなかったが、意識ははっきりしていた。
 しかし、彼女はスウォンが毒針に刺され倒れた時にポケットから何かを出したのを見ていたが、それからピクリとも動かないので、何か死ぬ間際にヨンエに渡したいものか何かだろうと思い、あまりに気に止めなかった。

『さて、ここでネイ、ヨンエに止めだ!』

 遂にヨンエに剣が襲う!

 その刹那!

「待て!」

 ネイに向けて言葉が飛んできた。

「何奴!」

 ネイの剣は止まる。
 ネイはその言葉の意味を理解している。
 一方のヨンエは、言葉の意味は理解できなかったが、その言葉の主はすぐに分かった。

「スウォン!」

 彼は生きていた。

「ヨンエ、よく頑張ったな。あとはオレに任せろ!」

 ヨンエは涙目でうなずく。

「な、なぜ………」

 ネイは狼狽した。
 何故・とは、スウォンが生きていた理由と、彼がネイの国の言語を使える理由についてである。

「悪いな。そいつは仕事上秘密なんでね」

 と、さらにスウォンは続ける。

「ネイ、あんたのやり方は非情だが、オレは非難しないぜ。戦いに情けは無用。やりたいようにやればいい。だが、オレには見えない。そうやって勝った先に何があるのか……。非道の勝利の先には虚しさしかない気がしてな…。あんたは姫様だのフィリス家だの言ってるが、それって勝ち負けと関係あるのか?あんたがそれを言い訳にしてるだけだろ!勝つか負けるかは常に己の中にしかないんだよ!毒使って勝てば良しとする奴は、程度の低いどうしようもない野郎だ!」
「黙れ!」


 逆上したネイは、スウォンに剣を向ける。

「ではお前は俺に勝てる自信でもあるのか!」



「ああ、あるよ。自信というより確信かな」


「ふざけるな!」


 ネイが左腕で斬り下げる!
 スウォンはすかさずネイの左側へ、そこへ斜め下から剣が襲う。それを上体を反らしギリギリでかわすとスウォンはネイの背後から左腕に飛びかかる。ネイの左腕を掴み、顎に左膝をアッパーで入れた。そして、ネイの左腕を軸に身体を逆方向に回す。今度は右膝が後頭部に牙を立てた。

「蛇狩・真虎殺」

 そう名付けられたスウォンの技を喰らい、ネイは崩れた。





「ネイ!」

 シャルロットが泣いて駆け寄る。

「急所は外してある。……お嬢さんの大事な人に悪いことしてしまったな……」

 スウォンは言葉を続ける。

「オレはネイのやり方を否定したけど、オレもネイも、共通しているところはある。それは……」

 スウォンが最後まで言い切る前に、それをさえぎるかのようにシャルロットが口を開いた。

「それは、守るべき存在のために戦っているということじゃな!」
「そうだ!だからそいつを大切に思ってやれよ!」


 シャルロットからの返事はなかった。
 ただ、彼女はネイの懐から薔薇を取り出し、スウォンに渡しただけだったのである。

『フランス側の降伏により・・・勝負あり!勝者、韓国代表、リ・ヨンエ!

 解説のスープーの声が会場に響き、試合は終わった。





 花道を歩いている途上ふいに、ヨンエがスウォンに聞く。

「ねぇ、スウォン。なんで、毒針を受けたのに元気なの?」
「ああ、それね。職場の人間を私用で使っただけの話」


 つまり、スウォンがスパイの仲間を使って、事前に相手の情報をくまなくつかんでいたのだった。スウォンは試合前からネイが切り札として毒針を使うことを知っており、あらかじめ解毒剤を用意しておくことができたのだ。

 また、ネイがいぶかしんだ「なぜスウォンがフランス語を話すことができたのか?」という疑問の答えも簡単である。スウォン自身、仕事で他国へ逃亡した人間を追うため、外国語は堪能なのだ。

 スウォンはネイの事も、シャルロットの事も、試合前からすべての情報を手に入れていた。ひるがえって、ネイはスウォンの情報を何一つ手に入れていなかった。敵を知り、己を知れば百戦あやうからず、と孫子にいう。
 勝負は、始まる前からすでについていたといえよう。

「じゃあ、はじめからスウォン一人で相手すればよかったのに」
「それは、ヨンエのためにならんだろう。これはあくまでMaid Fightなんだからな」

「も~、スウォンのケチ!」






 一方、シャルロットは起き上がったネイに言った。

「ネイ!わらわは決めたぞよ!」

 立ち上がり、こぶしを握り締めて天を見据えている。この姫様がこういう表情をするときには、大抵の場合、ロクなことが起こらない。経験上それを知っているネイではあったが、一応、尋ねてみることにした。

「……?姫様、それは……?」

「あのスウォンとやらをわらわの家臣にするのじゃ!ネイと組めば最強ぞよ」


 目をキラキラと輝かせているシャルロット。空を眺めながら、「うんうん。それがいい。さすがわらわは天才じゃ!」などとぶつぶつつぶやいている。ネイは泣きたくなったが、それでもなお、最後の力を振り絞っていった。

「ひ…姫様、それは難しゅう……、といいますか、私の立場が……」

「安心しろ!ネイはわらわの旦那様ぞよ!」

 そして、ふいに頬を赤く染めると、もじもじと足で地面にののじを書きながらいった。

「それに今夜は・・・ムフフ~よいではないか…」
(あ~、また始まった……)

 ため息をつくネイ。
 どうやら、彼の受難は終わりそうにないようである。





 そして、コイツ。
 
 直立歩行の解説カバ、スープーである。

 試合の興奮もさめやらぬ会場。気持ちよく解説をしていたスープーなのだが・・・

『いやー。いい試合でしたね。それでは、また二回戦でお会いしま…ウグッ!』

 スープー倒れる!男の声がした。

「ふぅ、まったく世話の焼けるカバだ。えー、こちら飼育員。スープー捕獲完了。至急動物園まで戻ります」

 謎の男に連れ去られるスープー。
 果たしてカバの運命は!


 次回、「はぐれカバ純情派、第24話」「湯煙殺人事件!?謎の桃源郷に二足歩行のカバを見た!」に・・・続かない(笑)。




maid fight Bブロック第4試合


終わり





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