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Bブロック
第1回戦 第1試合




中国代表 ロシア代表
ご主人様
遼斧
メイド
桂花
メイド
オクサーナ
ご主人様
矢島洋平
VS



選手控え室

 ワァァァァァ・・・。
 ドドドドド・・・。

 まるで地鳴りのように超満員の興奮が控え室まで響き渡る。
 その音が聞こえていないのか、はたまた気にしていないのか遼斧は黙々とノートパソコンを操作していた。

「各部とも異常なしか・・・」

 ノートパソコンのモニターで桂花の状態をチェックしている遼斧がよし、とパソコンを閉じる。

「・・・終わった?」

 桂花は遼斧がノートパソコンを閉じるのを見て近寄ってきた。

「ああ、何の問題もないよ。」

 遼斧は近寄ってきた桂花の頭を撫でる。

「よかった」

 に、と桂花が笑う。

「対戦相手の情報整理は終わってるかい?」
「うん、おわってる」
「初戦から手ごわい相手だね・・・いや」

 いいかけて遼斧は口を噤んだ。
 開会式の時に見た各国の代表達・・・そのうちに明らかに格下といえる相手がいただろうか・・・。

 否。

 誰とあたろうと手ごわいのだ、ならば。

「そろそろいこう、桂花」

 係員に出場を促され遼斧が桂花の肩を軽くぽんと叩く。

「うー、負けないもん」

 ふん、と気合を入れる桂花。

 ただ証明するだけだ、桂花の性能が一番秀でていることを!





 カタカタカタ・・・。

 球場の声援はまるで軽い地震のように控え室にある机などの備品をゆらしている。
 しかし、さすがにそこにいる人間までゆらすほどではない。
 カタカタカタ・・・、ソファーに腰掛けている矢島洋平は視点の定まらない目で遠くを見つめながら足を小刻みに震わせていた。

 準備をしていたオクサーナがその様子に気付き近寄ってくる。

「ヨーヘー大丈夫?」

 オクサーナが心配そうに声をかける。
 今思えば、開会式のときから洋平の様子が少しおかしかった。
 極度の緊張からか動きがギクシャクしていたり、目の焦点があってなかったり、返事が上の空だったり・・・。

 それは控え室に入ってからも続いていたのだ。

 控え室に入ってからオクサーナは何度も声をかけたが返ってくるのは生返事だけ。

「・・・ああ、大丈夫・・・」

 今度も同じ台詞。

「ヨーヘー・・・、無理しなくていいよ?」

 後ろから手をまわし洋平にしなだれかかる。

「試合場では後ろから見守ってくれるだけでいいから」

 耳のそばでオクサーナのつぶやきが聞こえた、その声は以外にも少し震えていた。

「・・・はは、情けないな」

 自嘲気味に洋平が口を開く。

「ヨーヘー?」
「こんなんじゃ、優勝なんて夢物語になってしまうね。・・・オクサーナ」

 洋平は後ろからまわされたオクサーナの手に自分の手を重ね、オクサーナのほうを向く。
 至近距離で二人の顔が向かい合う。

「戦いでは役に立てないかもしれない・・・、けど・・・君を守るから」
「・・・!ヨーヘー・・・」

 二人の唇がゆっくりと近づいていく。



 ゴンゴン。

 控え室のドアが荒々しく叩かれる。

「失礼しま・・・おや、どうなさったのですか。」

 少しマッチョな係員がドアを開けると中の二人が高速で立ち上がる。

「いや、別に・・・ね?」
「うん、なんでも・・・」

 少し二人の声が裏返っているのを気にしつつも係員は試合場への移動をうながした。

「じゃあ、行こうか。オクサーナ」
「うん。ヨーヘー」

 二人は並んで控え室を後にした。

 洋平の足取りは先程までとは打って変わり、しっかりと地を踏みしめていた。



試合会場


「・・・さて、皆さん。Bブロック第1試合の選手入場です」


 会場の熱気とはうらはらに落ち着いたアナウンスがながれる。


「・・・え?自己紹介するんですか?・・・私の?・・・はい、わかりました」


・・・どうやら試合場のまん前に置かれた実況席に駆け寄ってきたスタッフとの会話をマイクが拾ってしまったらしい。会場のカメラも実況席をうつす。


「・・・あ、どうも。Bブロック第1試合担当の甲斐摂子(かい せつこ)です、よろしくお願いします。ぺこり」


 ぺこり、というだけで頭を下げない摂子。


「・・・それと自分の本業は解説ですので、実況アシスタントを近くのゴミ箱から拾ってきました」


 摂子はそういうと隣の席においてあるくすんだ金属物を指し示す。


「・・・がらくた三等兵君です。よろしく。ぺこり」
「ダレガガラクタサントウヘイダヨ!」


 摂子の紹介が気に入らなかったのかくすんだ金属物がギザギザした口を開く。


「オレハ、『ケリオ』ダッテナンカイモイッテルダロ!」
「・・・さあ、間もなく選手の入場です」
「ムシ!?カッテニコンナトコロニ、ツレテキトイテ、コノコ、ヒドイ!」


 ケリオと名乗る金属物についてる煙突から蒸気が勢いよく噴出す。
 しかし摂子に気にする様子はない。


「・・・さあ、選手入場です。まず一塁側より中国代表、桂花選手の入場です。ご主人様の金遼斧とならんで試合場に歩を進めています」
「オオオ、メッチャコノミヤ。アノコ」
「・・・ガチホモ」
「ナンデダヨ!?ケイカチャンニキマッテンダロ」
「・・・幼女趣味」
「ワルイカ!」
「・・・手元の資料によりますと桂花選手はロボットメイドらしいですね」
「エ?」


 摂子は何かいいたげにケリオに視線をおくる。
 そして間を置き口を開く。


「・・・技術の躍進て、すごいですね」
「・・・イイタイコトガアルナラ、ハッキリイエヨ」





「おや?あれは・・・」

 遼斧がなにか気付いたように実況席をみる。

「?どうしたの遼斧・・・じゃなかった、ご主人様?」

 桂花が遼斧を見上げる。

「・・・あの機械どこかで見たような気がするんだ」

 ふむ、どこだったかなと思案にふける。

「ふーん」

 桂花も実況席をみる。

「まあ、そのうち思い出すだろう。今は試合に集中だ」
「うん」





「・・・続きまして三塁側よりロシア代表オクサーナ選手、ご主人様の矢島洋平選手入場です」
「オオオ、カワイコチャンバッカシヤ」
「・・・手元の資料によりますとご主人様とかなりラブラブらしいです。ひゅーひゅー」


 摂子は、抑揚のない声で二人を野次る。


「ナンダ、ガッカリ」


 摂子はまたもや何かいいたそうな目でケリオを見つめる。


「コンドハナンダヨ?」
「・・・しょせん8ビットか」
「モットヨウリョウオオイワ!」





「対戦相手はロボットメイドか・・・はは、まるでSFだな。岡田さんいたら喜びそうだね」

 控え室での緊張がうそのように洋平はリラックスしていた。

「くす。そうね、ヨーヘー」

 オクサーナが相槌をうつ。
 彼女もまた試合を今から行うという、緊張感を感じさせないぐらい落ち着いていた。

「オクサーナ」

 歩を進めつつも洋平が試合場を見つめつぶやく。

「うん」

 オクサーナもまた試合場を見ていた。

「必ず、勝とうな」
「うん、ヨーヘー!」





「・・・さて両者でそろいましたね、それでは。・・・めいどふぁいとBブロック第1試合、れでぃーごー」

 摂子の抑揚のない合図とともに両者の戦いの火蓋がきられた・・・。





「オレ、イラナクネ?」





試合開始


 摂子の合図とともに会場のボルテージは一気にあがった。

 しかし試合場にいる両組は極めて冷静に間合いをとる。





「・・・どうやら二組とも相手の出方をうかがっているみたいですね」
「ナゼダヨ?」
「・・・資料によりますと桂花選手もオクサーナ選手も近接戦闘を主体とした戦いがスタイルみたいですから」
「フムフム」
「・・・まず間合いを計ってるというところですかね」
「オオ、ソウコウイッテルウチニ、オクサーナガシカケタゾ!」





 オクサーナの先制攻撃で均衡がやぶられ、試合がはじまった。
 桂花との間合いを一気につめて下腹部めがけ左膝を打つ。
 桂花はこれを横に動きかわし、横っ腹めがけ掌底を放つ。

 ドン!

 衝撃音とともにオクサーナがふっとばされる。が空中で身をひねり着地し、桂花を正面に見据える。

「オクサーナ!大丈夫?」

 洋平がオクサーナに駆け寄ってくる。

「うん、大丈夫。・・・あのこ、ロボットとは思えないぐらい鋭い動きをする」

 それに・・・強い。
 数々の修羅場をくぐり抜けて来たオクサーナの肌が感じ取っていた。
 目の前にいる対戦相手の手ごわさを。





「うー」

 桂花がうなっている。
 先程の攻防で自分の掌底は確かにオクサーナのわき腹へヒットした。
 手ごたえもあった、しかし・・・。

「どうやら衝撃緩衝ジャケットのようなものを着込んでいるようだね」

 遼斧はオクサーナをじっと見据えながら呟く。

「みたいだね。それにりょ・・・じゃなかったご主人様」
「ん?」
「彼女、若干データ数値を上回る動きをするよ?」
「実戦における数値の上昇か、データ通り根っからの兵士というところかな。・・・それこみで彼女に勝てそうかい?」

 遼斧は桂花の頭を撫でる。

「勝つもん」
「よし、では今度はこちらから行くんだ。桂花」

 ふん、と握りこぶしを作る桂花の背中をぽんと叩く。





「・・・どうやら今度は桂花選手がしかけるみたいですね」
「ハイ、シツモン」
「・・・どうぞ、がらくた三等兵君」
「ケリオデスカラ!・・・ゴホン、サッキオクサーナガフットンダトキ、ケイカチャンガツイゲキシナカッタノハナゼデスカ?」
「・・・おそらく彼女が知っていたオクサーナ選手のデータ数値に誤差が生じたためだと思われます。・・・その生じた誤差を修正するために桂花選手は追撃できなかったのではないでしょうか」
「アンナミジカイジカンデシュウセイシタト?」
「・・・ふ」


 摂子はケリオを見て嘲笑する。


「クウクヤシイ、イマバカニシタデショ」

悔しそうにガチャガチャと動くケリオの煙突から水蒸気が勢いよく噴出す。





 シュ。

 桂花がオクサーナと距離をつめるべく動く。

「ヨーヘー、下がって」
「オクサーナ・・・」
「大丈夫、だいぶん身体が温まってきたから」

 すっ、と洋平の前に立つ。

「危なくなったら助けるから、がんばれオクサーナ!」

 洋平の言葉を聞きオクサーナはうなずく。

「ありがとう、ヨーヘー」

 そしてオクサーナは洋平に聞こえないように呟いた。

「元弾丸伍長オクサーナ、これより目標を殲滅します」






 桂花に距離をつめられたオクサーナはあわてることなく戦闘態勢に移行する。
 距離をつめてきた桂花がオクサーナへと攻撃をかける。
 突進力を生かし腹部への掌打を放つ桂花。

「まるで、さっきの模倣ね」

 身をひねり、その一撃をかわす。
 桂花はかまわず第2撃、3撃と次々とオクサーナに仕掛ける。
 その攻撃を次々とオクサーナはかわしていく。

「うー、あたらないー」

 攻撃を繰り出しながら桂花がつぶやく。
 10、20・・・絶え間なく続く攻撃をオクサーナは危なげなくかわしていく。

「あなたの攻撃はまるで教本通りね。右、右、左・・・そして」

 下段回転脚を放つ桂花。
 オクサーナはこれを上に跳びよける。

「う、上?」
「そうよ、そして」

 落下しながら桂花へと蹴りを放つ。

「あうっ」

 不意をつかれた桂花はオクサーナの蹴りを受け地面に叩きつけられる。

「あなたは、確かに強い。けれどそのポテンシャルを生かすにはまだ経験不足のようね」
「・・・う」
「そのまま寝てなさい、お嬢さん」


 上半身を起こした桂花にオクサーナがとどめの一撃を放つ。

 バシィ!

 桂花の側頭部にはなった蹴りを桂花が止める。

「なっ」

 驚くオクサーナ。
 すぐに桂花と距離をとり構える。



「・・・起こしてしまったか」

 遼斧は桂花を見てつぶやいた。





「・・・えー。どうやら桂花選手まだ戦えるみたですね」
「マジ?オクサーナノ、アノケリヲタエルノ?カナリ、チメイダ、ダッタトオモッタケド」
「・・・でも彼女立ち上がりましたよ。・・・資料にはタフとは一言もかかれてないんですけど」


摂子がアナウンスするとおり、桂花が立ち上がる。


「スゴイナ、オレモコンドアノボディニカエテモラオ」

ケリオは体をガチャガチャと動かし驚嘆する。





『自動戦闘モードに以降します』

 桂花の口から音がもれる。

『なお、パワーオートセーブ機能は正常に働いています』

 桂花の目がオクサーナを捉える。

『目標確認』

 桂花の足にぐぐっと力が込められる。

「さあ、見せてやれ桂花!」

 遼斧が叫ぶ、と同時に桂花は大地を蹴った。





 桂花は一瞬でオクサーナとの間合いをつめる。

「!」

 予想以上のスピードで間合いをつめられオクサーナのガード反応が遅れる。

 そこへ無数の攻撃が桂花から放たれる。

(く、全部さばききれない)

 オクサーナは桂花の攻撃を必死にかわしていく。

 が、一発、二発・・・徐々にオクサーナにヒットしていく数が増えていく。

(さっきまでとは違う・・・これ以上・・・もらうとまずい)

 そう思うオクサーナとはうらはらに桂花の攻撃は間断なく続いている。





「・・・さすがにロボットなだけあって攻撃の合間があきませんね」
「オクサーナハシュセイイッポウニナッテキタナ」
「・・・あきらかに先程までの桂花選手とは違いますね。・・・攻撃の流れがスムーズになって無駄がない」
「コノママキマッテシマウノカ!?」

摂子、ケリオのアナウンスが場を盛り上げる。






 試合場ではいまだに桂花の攻撃が続く。

 オクサーナも必死にガードするがヒット数は徐々に増えていく。
 もはやほぼサンドバッグ状態になりながら、それでも逆転のチャンスを狙っていた。

(何でもいい・・・少しの隙ができれば)

 この状況から脱出できる。しかし今のところ糸口が見つからない。
 オクサーナのガードをすり抜け桂花のボディーブローがオクサーナにヒットする。

「ぐ」

 オクサーナはたまらず、苦痛の表情をうかべ前かがみになる。

 そこへ放たれる桂花のとどめの一撃。


 と、その時。


「う、うわああああ!!」

 攻撃モーションに入っていた桂花に洋平が体当たりをかましたのだ。

「・・・ヨーヘー!」
「い、いったろ。君を守るって」

 洋平の体当たりを死角からくらい桂花の体制が崩れ、とどめの一撃は空振りに終わる。





「なに!ばかな・・・『自動戦闘モード』は死角からの攻撃にも対応できるはず。なぜ・・・」

 はっ、と遼斧は息を飲む。

「まさか」

 パソコンを開き高速で桂花の現在のデータを見る。

「く。やはり」

 パソコンの画面に映し出されたデータに死角ありの表示が映されていた。





「一気にきめよう、オクサーナ!」
「うん、ヨーヘー!」

 体勢を直そうとする桂花にそれをさせじとオクサーナが攻勢をかける。
 右から左から、上から下から先程の桂花に匹敵するほどの攻勢で一気に畳み掛ける。
 常に死角から攻撃を仕掛けられ桂花はなすすべなく一方的にやられる。
 体勢を立て直す間もなく桂花はダウンした。

「すごい・・・、まるで弾丸だ」

 洋平が呟いた。






「・・・勝負ありですね。・・・勝者オクサ・・・?」

 摂子が勝ち名乗りを上げようとしたとき桂花がむくりと起き上がる。

『戦闘・・・続・・・行』
「もういい、桂花」

 遼斧の声を聞くと何とか立ち上がった桂花は糸の切れた操り人形のようにそ場に倒れた。

「・・・えー。・・・では改めまして勝者ロシア代表、オクサーナ。」






「うー」

 桂花は目を覚ます。

「気がついたか、桂花」

 桂花を抱きかかえ、試合場を後にしようとしていた遼斧が覗き込む。

「勝ったの?負けたの?」

 桂花が質問を投げかける。

「・・・負けたよ」
「うー。・・・ごめんね、遼斧。勝てなくて」
「いいんだ、桂花。パワーオートセーブ機能をつけてなければ勝ててたからな」

 そういって頭を撫でる。

「それに桂花は今よりもまだまだ強くなれる余地がある。いずれは自動戦闘モードにならなくてもいいようになるよ」
「うん」





 試合場で勝ち名乗りをうけたオクサーナと矢島洋平に観客から歓声が上がる。

「ありがとう、ヨーヘー。あなたのおかげで勝つことができたわ」

 オクサーナは洋平の手をとる。

「い、いや、その、・・・照れるな」
「それに、・・・かっこよかったわ。ヨーヘー」

 オクサーナの言葉に、ははは、と照れくさそうに笑う。

「この調子で決勝までがんばろうね!」
「そうだね、オクサーナ」






「・・・以上Bブロック第一試合をお送りしました。・・・解説、実況アナウウンスは甲斐摂子でした。ぺこり」
「アシスタントノケリオデシタ」


 摂子がちらりとケリオのほうに視線をやる。


「ナンダヨ」
「・・・アシスタント。・・・ものは言いようか」
「アナタサイゴマデアクタイツクノネ」



maid fight Bブロック第1試合


終わり






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